<まとめ> 「ステークホルダー資本主義」は古来日本にあった近江商人の「三方よし(売り手良し、買い手良し、世間良し)」の考え方に通じる |
こんにちは、Mayです。
最近、「ステークホルダー資本主義」という言葉を聞くようになりました。この概念は、毎年スイスで開催される世界経済フォーラム年次総会(通称:ダボス会議)の昨年のテーマとして取り上げられていました。そして今年のダボス会議でもテーマの一つになっていました。
私が企業広報にかかわっていた頃は、日本では「企業の社会的責任」(Corporate Social Responsibility:CSR)が盛んで、企業が「ステークホルダー」という言葉を使うようになった時期でした。あれから10年…企業の社会的責任はどのように変化してきているのでしょうか。
「三方良し」とは?
日本には、古来「三方良し」という考え方があります。
goo辞書によると
さんぼう-よし【三方良し】「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの良し。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのが良い商売であるということ、近江商人の心得をいったもの。
とあります。これはまさに、今の「ステークホルダー資本主義」と同じ考え方です。
株主資本主義(シェアホルダー資本主義)
明治6年に、日本で初めて「第一国立銀行」という民間の株式会社が設立されました。現在のみずほ銀行の原点です。当時の株式投資は配当金を重視するものだったそうです。
そして、戦後の高度経済成長によって、「シェアホルダー」という概念が重視されるようになりました。この概念で、企業は株主を重視し、株主は売上や利益などで企業を評価するようになりました。
売上や利益ばかりを追求するあまりに、取引先や社員に過度に圧力をかける企業も出てきました。
ちなみに「シェアホルダー」とは、株主を指します。ストック(stock)も株券や株式のことを指しますが、一般的に「株式」(stock)というのか、ある特定の会社の株式(share)というのかでニュアンスが異なるようです。
企業広報業務にかかわっていた当時、アニュアルレポートなどで「社長メッセージ」を英訳する場合に「a message to stockholders」を「a message to shareholders」に変える提案をよくしていました。
企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)に対する考え方
2000年代初頭には、大型企業の不祥事が続き、法令遵守が強化され、欧米のCSRの概念が普及し、2002年には環境省が「環境会計ガイドライン」を発表するなど、基盤が整いました。企業の環境報告書やCSRレポートの発行が急増した時期でした。
その後、2008年のリーマン・ショックに起因する不況で、一時CSRが停滞しましたが、2010年に世界初のCSR国際ガイドラインが策定され、2011年の東日本大震災を経て、CSR活動も多様化しました。
ESG(Environment, Social, Governance)とSDGs(Sustainable Development Goals)
その頃、投資の際にESG(Environment, Social, Governance)を重視する動きが活発化し、「ESG投資」という言葉も使われるようになりました。日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 理事兼CIOの水野弘道氏がこのESG投資を世界的に提唱し、欧米を中心に広がりました。
ESGは企業の長期的な成長のためにも、そして持続可能な社会を築くためにも重要であると考えられ、今後もESGを重視する企業への投資は拡大すると考えられています。
2015年9月には、国連サミットで、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:通称SDGs)が採択されました。これは、よりよい世界を目指すための国際目標で、世界共通の17の目標と、目標ごとの169のターゲットから構成されたものです。
この概念については、企業だけではなく2025年の大阪万博に向けて、地域でも関心が寄せられているようです。(ある地域の新年会の話題にも取り上げられていました。)全ての人々にとってより良い、持続可能な未来を築くための目標なので、企業のみならず社会全体で取り組む必要があるのは当然でしょう。
「ステークホルダー資本主義」の台頭
こうして、ESGやSDGsという概念が台頭してきたことにより、今までの売上や利益などで企業価値を評価する「株主資本主義」から、顧客、取引先、社員とその家族、地域社会、株主、未来のステークホルダーといった、全てのステークホルダーに対して、企業が真摯に向き合わなければならなくなりました。
そこで出てきた言葉が「ステークホルダー資本主義」です。CSRで定義されているステークホルダーとは、取引先、顧客、社員とその家族、地域社会、行政機関などのことです。つまり、日本語でいうところの利害関係者のことです。
概念自体は1963年、米国SRIインターナショナルの内部のメモで初めて使われたと言われています。R・エドワード・フリーマンが1980年代に提唱し、実践・理論の両面で広く受け入れられるようになりました。
企業が継続するためには、安定した取引先が必要であり、また社員もその経営者と同じ方向を目指して協力し合える関係である必要があります。その社員が安心して働くためには、彼らを支える家族が大切です。
もちろん、その企業の商品やサービスを購入する顧客がいなければ事業の存続はできません。その企業に場所を提供してくれる地域がなければ、事業を行うこともできません。また、行政機関が許容した事業でなければ、事業の安定した継続は不可能です。
逆に言えば、取引先や顧客とも良好な関係を築き、地域社会に貢献し、行政機関にも認められていれば、企業の持続はもとより、成長も期待できるでしょう。
当然といえば当然のことなのですが、高度経済成長期や核家族化を経て、さまざまな価値観が大きく変化し、人と人とのつながりが疎遠になっているのを感じる社会には、改めて認識が必要な概念なのでしょう。
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