事件の容疑者が犯罪を犯した国から「犯罪人引き渡し条約」を締結していない国に逃亡した際、政府がその国に代理で裁くことを要請し、処罰してもらうこと。現在レバノンに逃亡しているゴーン被告が出身国であるブラジルに渡航を希望していることから、日本政府が代理処罰を要請する可能性があるようだ。 |
こんにちは、Mayです。
2019年末に日本中が驚いた元日産自動車会長カルロス・ゴーン被告の海外逃亡。最近の新型肺炎のニュースの陰に隠れてしまったような印象ですが、今月2日の時事ドットコムニュースで「ゴーン被告の手配執行は困難 代理処罰で対応可―ブラジル」という記事がリリースされていました。「代理処罰」という言葉が聞き慣れなかったので調べてみました。
代理処罰とは?
正式には「国外犯処罰規定による訴追」というようです。
デジタル大辞泉によると、以下の通りです。
外国で犯罪を犯し、逃亡してきた自国民や第三国人を、自国の法に基づいて処罰する制度。犯罪があった国からの要請や証拠提供に応じて行われる。国外犯処罰。
[補説]「犯罪人引き渡し条約」を締結している国に対しては、求めに応じて容疑者を拘束し、引き渡す。
今回の場合は、日本で特別背任容疑(会社法違反)で逮捕されたゴーン被告が海外へ逃亡しました。その逃亡先となったレバノン、そしてゴーン被告が現在渡航を希望しているブラジルと日本は、「犯罪人引き渡し条約」を締結していません。
そもそも日本が「犯罪人引き渡し条約」を結んでいるのはアメリカと韓国だけです。従って、それ以外の国の場合は代理処罰を依頼せざるを得ないのでしょう。
従って、日本政府がレバノン、もしくはブラジルへ依頼して、その国の法律で裁いてもらおうということになります。ブラジルはゴーン被告の出身国でもあり、前述の通り、現在ゴーン被告が渡航を希望していることから、代理処罰依頼はブラジルに対して行われるとみられているようです。
代理処罰の事例
ウィキペディアによると、「1999年以降、2006年末までに日本から代理処罰を要請した例は23件、37人にのぼり、中国(19人)、韓国(14人)、モンテネグロ(2人)、台湾(1人)、タイ(1人)で適用された」そうです。
具体的事例:
2005年 静岡県 当時2歳の女児死亡事故(交通事故) ブラジル帰国後に日系ブラジル人女性が現地の裁判所で過失致死罪に問われ、1審で有罪に。2審は公訴時効が成立すると判断。
2015年 東京・表参道 英国に逃亡した宝石店強盗 犯罪人引渡条約が未締結ではあるものの、2020年1月現在、日本と英国の警察当局で協議が進んでいる。
国際逮捕手配されているゴーン被告
時事通信によると、現在ゴーン被告には国際刑事警察機構(ICPO)を通じて「国際逮捕手配書(赤手配書)」が出ています。しかし、ブラジルの入管当局によると、「赤手配書の目的は身柄の引き渡しのための逮捕もしくは所在把握」とのことで、ブラジルの憲法は、国民の外国への引き渡しを禁じているそうです。そういう事情からも代理処罰の線が濃厚なのかと思われます。
ゴーン被告の罪とは?
ゴーン被告の逮捕は3回にわたります。
2018年11月29日 2010年から2014年の有価証券報告書への虚偽記載(金融商品取引法違反)
2018年12月10日 2015年から2017年の有価証券報告書への虚偽記載(金融商品取引法違反)
2018年12月21日 特別背任容疑(会社法違反)
ゴーン被告はこれらの違反行為に対して「経営陣や検察の陰謀である」とし、日本の司法制度の在り方に異論を唱えて国外逃亡した、という主張をしています。
ここではっきり区別すべき問題は、金融商品取引法違反や会社法違反については裁判にて争うべきもの(争えるもの)であるのに対し、国外逃亡は明らかな違法行為であるということです。
日本が抱える問題点
今回のゴーン被告の逮捕、逃亡劇で浮き出されたのは、日本の司法制度の在り方と日本の空港(特に今回舞台となった関西空港)の脆弱性などでした。
司法制度については、取り調べ方や制度など、改善が必要な部分は多々ありますし、これまでもいろいろ問題として取り上げられてきています。政府や関係機関でもしっかり取り組んでもらいたいところです。
今回、国外逃亡が可能になった背景には、どう考えても空港職員などの協力が不可欠だったでしょう。コンプライアンスの強化など、どのような対策が取られていくのか、今後に期待したいところです。
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